第55話 つなぎ服の男
新型ウイルスの感染が始まって1か月余、三宮の人通りも
減少していたが春の彼岸で三連休となり、やや多くの人が
行き交う日曜日。地図パネルの前でつなぎ服を着た男性が
考え込んでいた。声を掛けると60才くらいの工員に見えた。
 
ここは高速神戸の駅か?と、ここは三宮駅なので、もっと西
であることを伝えたが納得していない。すると、きのう西成 
(大阪)から国道43号線を歩いて来たと言う。車ですかと  
確認すると、いや歩いて来たと言う。疲れ感があったものの
言葉はハッキリしていた。                                 
 
それならニ駅くらい歩けるだろうと道順を説明した後、高速
神戸のどこに行くかを聞いてみた。兵庫区役所だと言うので
歩く道順を変えてご案内した。                                 
 
事情を話してくれたが、生活保護をもらうためやってきたが
近くの中央区役所だと明日月曜日になると言われた。(理由は
  分からないが)兵庫区役所だと今日もらえるのでどうしても行き
   たい!と意志が固かった。                        
見送りながら、無事に着いてくれよと願った。