第15話 スカートを噛む
                   
 
寒い冬の日曜日だった。
いつもの場所で ご案内をしていると、突然 「ブブー」と大きなブザー音が鳴った。
 
なった方向を見ると、エスカレータの降り切った所に女性と警備員がうずくまっている。何事かと近づくと、エスカレータは止まっていて、女性が自分の履いているスカートを引っ張っている。エスカレータの最下段にある櫛状の鉄板がジーンズ生地のスカートを噛み込んでいた。
 
当の女性は、早く脱出しようと必死で引っ張るが取れそうもない。私は周囲に危険がなかったので、「スカートを破らないで保安を呼ぼう」と言うと、警備員が無線で手配してくれた。
 
1~2分で駆け付けた担当者が、櫛状の鉄板を外すとスカートは破れず、事なきを得た。ホッとした女性は、ジーンズがぶ厚かったので、引っ張り出すのが無理だったと理解出来たようだった。見ていたギャラリーは怪我もなく安心していた。くれぐれも、ロングスカートでの歩行はいつも以上に注意してもらいたいモノた。
 
担当者に聞いて分かったのは、エスカレーの始点と終点には必ず赤色の緊急停止ボタンが設置されている。停止ボタンを押した場合は、乗っている人が倒れないようにゆっくり停止する設計になっているそうだ。