第19話 神戸で一番ハンサムな人
 
 
 長く寒かった季節を抜け、コートから解放された土曜日だった。
9時頃、3人の若い女性が地図を見ていたので、「どちらをお探しですか?」と、いつものように声掛けをした。「神戸で一番ハンサムな人を知っていますか」 意外な返事が返ってきた。何のことか解らず「さぁ、ねぇ」と応対したが、「#$☆&‥‥って知りませんか?」 理解が出来ないので「知りませんね」と答えるのが精一杯だった。
 
彼女たちの言いたいことを聞いてみると、神戸のハンサムボーイ(なぜかイケメンとは言わなかった)の所属するバンドが出るライブハウスにやってきた。そのライブハウスの場所を確認して、繁華街の三宮に戻ってきた。開演の夕方まで7時間ほどあるので、どうしょうかと困っていると言い、栃木県から来たのでよく分からないとのこと。
 
時間がたっぷりあるので、六甲山か明石大橋を勧めてみた。すると、ひとりが「明石大橋知ってる、行きたい!」と叫ぶや全員一致するのが早かった。行き方を繰り返し説明したあと、電車の進行方向左側の景色が見えるように座りなさいよ、と付け加えた。
 
また、ランチの相談があったので、少し足を延ばして明石駅の南側で明石焼き(たまご焼き、600円前後)を食べるのもいいし、三宮に戻って来て神戸牛(3千円ちょっと)もいいかな、と言って私が時々行くステーキ屋を説明して見送った。
 
午後2時過ぎに3人娘がニコニコしながら戻ってきた。そして、明石大橋の観光歩道を歩いてガラス越しに真下の海を見たこと、明石まで足を延ばしてたまご焼きを食べたなどと嬉しそうに報告してくれた。
たまご焼きでは、おなか一杯にならなかったのでは?と聞くと、三宮に戻ってステーキも食べて来た、と言うのでその行動力に脱帽。
 
さらに、まだ時間があるのでどうすればいいかとの相談に、シティーループバスで観光地巡りをするように勧めて見送った。それにしても、栃木からイケメンを追って神戸にやって来てのこの行動力、若さって素晴らしい。