第21話 いれずみの女
 
 
 風の強い日曜日の朝、遠距離バスの到着が次々と続いていた。そんな中、スマホをのぞき込んで何かを探している女性二人が居た。
 
声を掛けると、「この時間に空いているホテルを知りませんか?」 何とも頓珍漢な言葉が返ってきた。こんな時間に難しいと思いつつも、近くのリーズナブルなシティーホテルに行って尋ねるように提案したが、気が進まないらしく 「おじさん、ラブホテルはどこにありますか?」 予測を越える質問が飛んできた。
 
LGBTが市民権を得る時代とは言え、ストレートな質問に戸惑いつつ、シティーホテルではダメかと問い直すと、「私たち、タトゥーが入っているのでマズイんです」 なぜますいのかは追求せず、何となく納得し歩いて10分ほどのラブホが立ち並ぶ地域を地図で示した。
「遠いけど、行ってみるわ」と言いつつ歩き出した。
 
髪を染めている程度の普通の女性なのにきれいな肌にキズを入れる時代になってしまったのか。なんだか悲しい。