第25話 露出男 現わる
 
 
 2月の小雪がちらつく寒い日曜日だった。
やや人通りは少な目だったが、10時を過ぎていつものように、日赤の献血を呼びかける担当者が出て、幾分賑やかになりいつもの風景になった。
 
1時間ほど経った時、献血を呼びかける女性の声が急に大きくなった。7mほど離れているその女性の方を見ると、女性の真横で顔を見ながら動かない小柄な男が立っていた。
 
何かおかしいと直感したので近づくと、男はこちらを振り返った。見るとズボンのチャックが下りて、バンドを緩めてV字に開いている状態だ。間をおかずに私は「そんなとこを開けてたら風邪ひくぞ!」と言うと、大丈夫だと言いながら立ち去った。
 
一件落着かと思ったら、駅構内で献血の声かけをしていた別の女性が、「さっき私の前でポロリと出したのよ」と走ってきた。これは事件だと思ったが、男の姿はない。それから1時間ほどして、遠くからこちらを見ている先ほどの男に気づき、私と視線を合わすと人ごみに消えた。
 
勿論、献血の呼びかけは男性に代わっていたので、その日は安心して帰宅した。後日、事の経緯を交番に届けておいた。