第26話 ヘルプマークの普及を
 
 
 昼食を終えていつもの活動場所へ戻ると、案内地図に顔を付けんばかりに覗き込んでいる男性が居た。
 
「どちらへ行かれますか?」 声掛けに無反応。暫く他の人のご案内をしていたが、その男性はやはり地図スレスレにメガネを近づけて文字を探している。もう一度訪ねたが、やはり無反応だ。
 
外見は、50才前後のスーツを着た普通のサラリーマン風だ。難聴者かも知れないので、軽く肩を叩いて案内していることをゼスチャーでアピールすると、やっと振り向いたものの、しゃべることができない様子。
 
私は、手話ができないので 「ど・こ・へ・い・き・ま・す・か」と口を大きく開けて尋ねると、カバンの中をゴソゴソと探し始めた。暫く探していたが、やっと、薬局の薬袋を取り出した。
 
薬局の住所が、須磨区白川台とあり、たまたま知っている地区だったので、紙に「名谷駅」と書くと首を縦に振ってくれた。「よっしゃ~」と内心で叫び、地下鉄の乗り場までお連れした。
 
歩きながら、切符の買い方、障害者割引の事が気になったので、駅員に「名谷へ行かれるそうです。あとお願いします」 と引き継いだ。
 
もしも、私が居なかったら、彼が名谷に着くまでどれだけの時間がかかったことだろう。上のヘルプマークとは趣旨が少し違うかも知れないが、身につけてもらいたい。