第27話 浮浪者(路上生活者)に近づく女性 
 
 
 最近は、繁華街周辺に住みつく浮浪者が男女とも減少しているようだが、三宮周辺には今も数人が居る。
 
雨の上がった昼近くだった。ひとりの浮浪者が20代と見られる綺麗な白人女性を伴って、目の前を通り過ぎた。浮浪者同士が連れ立って歩くのもめずらしいのに、美人と歩いているのは私の常識が崩れる想いで見ていた。
 
暫くして、バスターミナルから戻ってきた二人が私に近づき、浮浪者が 「この娘をバスターミナルへ連れて行ったが、違うようなので説明してやってほしい」 と助けを求めてきた。
 
つまり、旅行中の女性に何かを聞かれたが、意味が分からずバスターミナルにお連れしたが、バスではないようなので聞いてやって欲しい、ということだった。
 
女性は、観光案内所を聞きたかったようなので説明したところ、私の目を全く見ようとせずに、浮浪者が立ち去ると後を付いて行ってしまった。そして、三人の浮浪者が溜まっている場所で話込んでいた。。
 
案内した浮浪者は、汚れた柄物シャツにしわしわズボン
に野球帽という出で立ちなので、一般人に見えなくもないが、顔の黒さや特有の匂いからそれと即断できる。しばらくして見ると全員居なくなっていた。
 
翌日、くだん浮浪者とすれ違った時 「きのうの女性はしつこかったですわ」 と言った。昨日の外国人女性は、浮浪者をヒッピーと思ったか、ホームレスのいない国から来たのだろか? 何とも不可解な構図であった。