第29話 救急車で入院 
 
 
 小柄な高齢のご婦人が 「この辺に救急病院はありませんか?」と尋ねて来られた。
 
急に体の具合が悪くなったのか、緊張しながらよく聞いてみると、昨日の夜、兄が倒れて救急車で病院に運ばれた。自分も一緒に乗って病院へ行ったとのこと。
 
兄の意識がある内にもう一度会っておきたいので、昨日の病院へ行きたいと言う。覚えているのは、5階の501号室だけで病院名は分からない。
 
そのご婦人は85才というから入院された方は、かなりの高齢に違いない。何とか記憶を呼び起こそうと 「市民病院ではなかったですか」と聞いてみた。 「市民病院なら私はわかります!」といささかの剣幕。
 
北区から運ばれて、501号室を繰り返すばかり。その病院からの帰りを聞いてみたが、タクシーに乗ったので三宮に近かったことしか分からないと言う。私立病院で2つほど頭に浮かんだが、このケースは誘導による間違いは避けねばならない。困った。
 
昔、保険金の事で救急搬送記録の証明を消防署でもらったことを思い出した。そこで、消防署に搬送記録を尋ねると分かることを説明し、納得してもらったものの消防署まではかなり遠い。仕方なく、交番までお連れして事情を話して戻った。
 
私の中では、一件落着だったものの、やはり数日間は無事にお兄さんに会えたのか気がかりであった。