第34話 堂々とした迷子君
いつもの案内位置に立っていると、突然、大きな鳴き声で子供が前を通り過ぎて行った。 親に叱られて後を付いて行っているように見えたが、声が異様に大きい。マクドの紙袋を持っていたから周囲の人も親の後を追っているのだろうと見送った。 2分ほどして、先ほどの子供が泣き続けたまま戻ってきた。今度はまっすぐ歩かずに蛇行している。これはおかしい!そこで、子供の大声に負けないように 「ぼく! どうした!」と声を掛けると、パタッと泣き止んだ。 続いて、普通に「どうしたんや?」と聞くと、「お父さんとはぐれた」 「そうか、そうか」などと落ち着かせ、ゆっくり話を聞くと、「加古川から電車に乗って映画を見に来た。三ノ宮駅で降りて改札を出ると、お父さんが見えなくなったと言う。 その子は、体格が大きく中学生にも見えたが小学2年だった。OSシネマの映画館に行ってみるかい? 「うん」。エレベータで映画館ロビーへ行ったが、お父さんはいないようだ。仕方なく、「交番へ行こうか?」と聞くと、「うん」 最寄りの交番に行って、今までの経緯を警官に話して、引き渡した。その後しばらくご案内活動をして、人通りが一段落したので帰り支度を始めたが、先ほどの子供が気になったので、交番に寄ってみた。 警官によると、あれからしばらくして、父親が来て無事に出会えたとのこと。「それは良かった」と言って帰ろうとすると、警官が「ありがとうございました。ご苦労様でした」の声で送ってくれた。 よく考えてみると、警官から感謝されたのは初めてかなと思いつつ帰路についた。 最近は「歩きスマホ」や「自転車の片手スマホ」が多い世の中。小さな子供と歩く時ぐらいは、是非手をつないでほしいものだ。 |