第48話 ライブチケット
 
 
 
 正月気分も覚めた1月の日曜日、30才前後のカップルが少し離れた所で話合っていたが、女性が突然座りこんでボストンバッグの中を探し始めた。
 
一度ならず二回三回と徹底的に周りの目も気にせず探し続けていた。諦めたのか、案内地図にフラフラと歩いた。「何かお探しですか?」と声を掛けてみた。
 
「チケットを無くしたんです」と聞くやピンときた。1時間ほど前、いつもより人通りが少ないので駅構内を見回った時に、ビニール製の薄い封筒が落ちていた。通行人は気にもせず踏みつけていたが、拾ってみると中にチケットがあり今日のライブだった。会場がポートアイランドだったので、ボートライナーの駅担当者へ届けておいた。
 
その女性に2階の駅の窓口へ行くように勧めた。暫くすると近くに戻って誰かを待つのか二人で楽しそうに話している。近づいて、チケットはありましたか?と尋ねると「見つかりました、ありがとう」、と事務的に答えた。
 
違うだろう! 戻った時にすぐにお礼を言うべきではないのか! と思ったが、良かったねェと言いつつ私の定位置に戻った。時代は変わって行くのか、残念。