第8話 いい仕事してますね~
 
                 
 爽やかに晴れた日だった。
水色とも青色とも言えない色の和服を着た男性が近寄ってきて 「この辺にコンビニがありませんか?」と聞かれた。「このビルを左に曲がるとローソンがあります」 と答えたものの、何か違和感とともに印象に残った。なんでも鑑定団の鑑定士に似た和服の似合う60才前後の紳士にコンビニを聞かれたからだろう。
 
その後、いつも通り1時間ほどご案内をしていると、先ほどの和服の紳士が私の一段落するのを待ちかねたように近づいてきて、「暫く見させてもらいましたが、いい仕事していますね~」。「いや~、ボランティアで楽しんでやってます」と返したが、立ち去る気配がなかった。
 
合間をみて、私の動き、案内の簡潔さ、ジェスチャーの分かり易さ、などを褒めちぎるので、どこで落とされるかと不安を持ちつつお相手をしていた。その男性曰く、初めて来た神戸にこのような案内が居ることに感激されたようで、大阪駅や東京駅にもその必要性を感じられたようだ。
 
私自身は、阪神・淡路大震災で全国の方にお世話になったことへのお返しと思って始めたが、いつの間にか自分の健康維持のため、人のためになっていると自負しなから続けている。
 
ただ、2時間ほど前にご案内した人から 「ありがとう、おいしかったよ」 「すぐにわかったよ!」などと言われることもあるが、年のせいかどこへご案内した人か、ほとんど覚えていない。と言うのも、6時間ほどの活動で300人から多い時は600人ほどのご案内になる。仕方なく「いや~、どうも」で済ませている。